廃棄物から新たな価値を。波佐見焼と美濃焼の挑戦

私たちについて

長崎県波佐見町で波佐見焼を製造している窯元「重山陶器」です。波佐見焼や陶器の情報を発信しています。食器の販売も行っているので、ぜひ見ていってください。

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私たちの食卓を彩る美しい陶磁器。しかし、その生産過程では廃棄物やCO2排出といった環境負荷が課題となっています。こうした課題に対し、日本の二大陶磁器産地である長崎県の「波佐見焼」と岐阜県の「美濃焼」が、サステナビリティを追求する先進的な取り組みで新たな価値を創造しています。伝統を守りながら未来を切り拓く、二つの産地の挑戦を追いました。

波佐見焼:廃棄される石膏型が米になり、お菓子になる循環ビジネス

長崎県波佐見町で生産される「波佐見焼」は、近年そのデザイン性の高さで人気を博しています。この地で日本有数の規模を誇る陶磁器卸売業者「西海陶器株式会社」は、サステナビリティ経営を加速させています。同社は2024年10月、十八親和銀行からサステナビリティ経営を支援する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の融資を受けました。

廃棄物50%削減への挑戦

この融資において西海陶器が掲げた目標の一つが、生産時に排出される廃棄物を2023年度比で50%削減するという野心的なものです。その中心的な取り組みが、廃棄物のアップサイクルです。

陶磁器の量産に不可欠な石膏型は、約100回程度の使用で劣化し、これまでは産業廃棄物として処分されてきました。しかし、西海陶器ではこの使用済み石膏型を粉砕し、土壌改良材として農業に活用するという画期的な取り組みを行っています。

「陶器」と「農業」のユニークな連携

さらに驚くべきは、その後の展開です。この石膏由来の肥料(土壌改良材)で栽培された米粉用の米「ミズホチカラ」を使い、クッキーやシフォンケーキなどのお菓子を製造。それを波佐見焼の器(陶箱)に詰め合わせて販売するという、まさに「地産地消」を超えた循環型のビジネスモデルを確立しているのです。この取り組みは、廃棄物削減だけでなく、異業種である農業との連携を通じて地域経済の活性化にも貢献しています。

また、産地全体でも環境負荷軽減への意識は高く、古くから製品輸送時の梱包材を極力減らすため、プラスチック製のコンテナ「サンテナー」を窯元と卸売業者の間で繰り返し利用する物流システムが定着しています。

美濃焼:「Re-食器」と「脱炭素」で未来を創る日本最大の産地

国内の陶磁器生産シェア50%以上を占める日本最大の産地、美濃焼(岐阜県)でも、サステナビリティへの挑戦が力強く進められています。

使われなくなった食器が、新たな器へ

その代表的な取り組みが、家庭や飲食店で不要になった使用済み食器を回収・粉砕し、新しい食器の原料として再生する「Re-食器」です。これは、美濃焼産地の有志企業や研究機関が集まって発足した「グリーンライフ21プロジェクト」の主力事業で、回収した食器の粉砕物を20%から50%の割合で粘土に混ぜ込み、新たな「リサイクル陶土」を製造します。この取り組みは、限りある資源である陶土を無駄にしない、画期的なリサイクルシステムとして注目されています。

CO2排出量削減を目指す「脱炭素美濃焼SDGsプロジェクト」

陶磁器産業のもう一つの大きな課題は、焼成工程で排出される二酸化炭素(CO2)です。陶器は1250℃、磁器は1300℃以上という高温で焼成されるため、多くの燃料を消費します。

この課題に対し、土岐市では陶磁器メーカーが一体となり「脱炭素美濃焼SDGsプロジェクト」を推進。各メーカーが焼成温度や焼成条件を見直すことで、CO2排出量の削減に挑戦しています。

まとめ:伝統産業が示すサステナブルな未来

波佐見焼と美濃焼の取り組みは、単なる環境問題への対応にとどまりません。廃棄物を活用した新商品開発、異業種連携による地域経済の活性化、そして産地全体のブランド価値向上へとつながっています。伝統を守りながらも、時代の要請に応え、革新を続ける地場産業の姿は、私たちに持続可能な社会を築くための多くのヒントを与えてくれています。

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